明日香村の彼岸花

「雨の明日香村」
飛鳥寺から橘寺まで歩いた。
今の私は2時間が限界。
歩きながらいろんなことを思い出す。
癌が再発するまでは、テレビの現場に復帰することを目標に頑張っていた。少しずつ仕事も再開できていた。
でも、再発の現実に職場復帰を諦めなくてはならなかった。
これから何のために生きればいいのか、完全な仕事人間だった私は生きる意味を見つけられず、自分の居場所すら失っていた。
夢を持とう。闘病生活は辛く、生きる目標がなければ、前を向くことはできなかった。
私はふたつの夢を持った。当時は夢というよりも妄想に近かった。
夢が叶うとは正直思っていなかったが、夢を持つことが病気に向き合う力となった。
夢のひとつは、「ミニ番組を持つ」
日々撮り続けてた映像で番組を制作したい。
ご縁に恵まれ、番組ではないが、NHKで週に一度の枠を担当することになった。
「やまとの季節七十二候」は二年半で打ち切りとなったが、夢に手が届いたのだ。私が死ぬまで放送を続けさせて欲しいと願ったが、その思いは届かなかった。命と引き換えに番組を続ける願いはNHKには受け入れられなかった。私は病気を抱えて生きなければならないが、テレビカメラマンとして最期を迎えたかったのだ。死ぬ時は現場でカメラを持って逝きたかった
もうひとつの夢は「マイ映画館を持つ」
私の映像作品だけを常時上映している小さな映画館を夢見ていた。
観光施設でもいい、公共の施設でもいい、美術館や博物館の中でもいい。そこへ行けば誰でも奈良の映像詩がいつでも観られる空間を夢見ていた。
平城宮跡いざない館や金峯山寺で期間限定ではあるが、その夢に近づいた。でも、そこまでだった。
レクチャーホールでは月に一度の上映会を継続しているが、映画館というよりはイベントである。マイ映画館という感覚はない。
テレビカメラマンとしての夢を病気に奪われた私が奈良で願ったふたつの夢。私の残された人生でその夢が叶うとは思っていない。
でも、その夢を叶えるために頑張ったことが生きる意味を教えてくれた。手が届きそうなところまで夢に近付いた。私の妄想が少しでも形になったことを誇りに思う。
何よりも支えてくださった方々に心から感謝します。
私の力不足をお許しください。

6 Comments

  1. いつも素敵な動画を見せてくださり、本当にありがとうございます。心から感謝しております。

  2. 雨の中 秋深まる明日香村
    稲田 あぜ道 小川 彼岸花
    懐かしい風景
    気持ち故郷に戻ってゆく

    雨の中 明日香村を歩いての撮影
    お体ご自愛下さいますように
    心に沁みいる映像をありがとうございます

  3. 美しい…🙏
    これだけの花を咲かせるのにこれからどれだけの時を寒さに耐えながら頑張るのかと思うと、とても愛おしい…💓
    ありがとうございます🙏🙏
    雨がお身体にさわりませんように…🙏

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