【心療内科】どうすればいいかわかりません【精神科医が9分で説明】うつ病|自己肯定感|学習性無力感

0:00 (1)はじめに
0:16 (2)「どうすればいいかわかりません」
1:33 (3) 「わからない」が増える理由
1:50 ①精神症状の影響
3:03 ②自発性の問題
4:52 ③周りの目の問題
6:34 (4)どうすれば判断できるか?
7:51 (5)一歩が踏み出せない場合は?
8:54 (6)まとめ

「どうすればいいかわからない」ことが増えるとき、うつ病や統合失調症などの症状由来のこともある一方、「自分で考え判断する」自発性が、自己肯定感の低下や学習性無力感などの様々な理由でうまくいっていない場合もあります。

ご質問「どうすればいいかわかりません」について、精神科医が9分で回答しています。
出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)

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【ご質問】どうすればいいかわかりません

(1)はじめに

臨床の場で、「どうすればいいですか」という質問をよく耳にします。特に精神医療の範疇を超えた日常的な事柄についても、この質問が繰り返されることがあります。そんな時、私はこう答えています:「多少間違えても自分で決めて判断して動くこと自体が大事です」

(2)「どうすればいいかわかりません」

この質問の背景には、「間違えてはいけない」という信念が影響していることが多いように思われます。しかし、ストレスマネジメントと問題解決の多くは、行動と問題解決で成り立っています。つまり、行動と問題解決がうまくいかないと、ストレスマネジメントも困難になり、結果としてストレスが蓄積されます。これは、うつ病などの精神疾患の慢性化や再発リスクを高める要因となります。

(3)「わからない」が増える理由

①精神症状の影響

うつ病や統合失調症などの精神疾患、特に急性期においては、症状によって判断力が大きく低下することがあります。この場合、原因となる精神疾患の治療に専念することが重要です。症状が重度の場合は、入院治療が必要になることもあります。

発達障害の特性により、バランスの取れた冷静な判断が困難な場合もあります。この場合、薬物治療だけでは対応が難しいため、特性を理解しつつ、その特性をカバーする取り組みを行い、徐々に判断力の改善を図ることが現実的です。

②自発性の問題

自分で考え、実行する習慣が身についていない場合、判断をすることが難しくなります。失敗による痛みを避けようとする傾向も見られます。これには性格的要素もありますが、反復練習の有無も大きく影響します。

自己肯定感の低さも判断力に影響を与えます。自己肯定感が低いと自分の判断に自信が持てず、結果として判断力の差が年々拡大していくことになります。

③周りの目の問題

失敗を恐れる心理や、他者の目を過度に気にすることも判断力を低下させる要因となります。特に、挑戦して失敗することを笑うような「減点法」の文化に長く触れていると、その影響は強くなります。

他者軸が強い場合、周囲の影響を受けやすくなります。特に「減点法」の環境と組み合わさると、判断や挑戦に大きなブレーキがかかってしまいます。

幼少期の経験も大きく影響します。正解を優先する環境で育った場合、自分で判断することを避ける習慣が身につきやすくなります。

(4)どうすれば判断できるか?

判断力を向上させるには、今から一歩ずつ練習を始めることが大切です。判断する力も広い意味では技術の一つであり、反復練習(PDCAサイクル)によって向上させることができます。

小さな失敗は成功の糧として活用し、可能であれば挑戦を良しとする環境を探すことも有効です。ただし、周囲を巻き込むような大きなリスクがある場合は慎重に対応する必要があります。日常的な判断と挑戦の練習を重ね、時には大きな舞台に備えていくことが重要です。

(5)一歩が踏み出せない場合は?

過去の経験は確かに性格や行動傾向に影響を与えますが、変えられるのは今の自分の考えと行動だけです。過去の影響を認識しつつも、基本的には今とこれからの行動に集中することが大切です。

できることは「上書き(リライト)」です。過去の積み重ねの影響を完全に消すことは難しいですが、新しい経験を重ねることで上書きしていくことは可能です。今を「過去よりも密度の強い経験」で埋めていくことが、現実的な対策となります。

(6)まとめ

「どうすればいいかわからない」という状況は、様々な場面で発生し、精神面にも強く影響を与えることがあります。その主な原因は、精神症状の影響、自発性の問題(自発性の低さ)、他者の目の影響の3つです。

後者2つの場合、今からできる判断を徐々に練習し、判断する力を技術として身につけていくことが現実的な対策となります。一歩ずつ、自分で決める経験を積み重ねていくことで、判断力は必ず向上していきます。

こころ診療所グループ(医療法人社団Heart Station)
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#うつ病 #わからない  #自己肯定感  #心療内科  #精神科医 

【監修者】
医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎
精神科医(精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医)
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。

8 Comments

  1. 実際鬱になる原因をどうにかするには医師の範疇から外れている場合が多い
    自分もそう
    根本をどうにかしなきゃいけないのは分かっているがそれがどうにもならない
    主治医も自分もそれをわかっているから病院に行くのはただ薬を貰いに行くだけ
    の秒診断にずっとなっている

  2. 今回の内容はとても重要だと思いました。
    どうすればいいのかわからないから困っている人が多いと思うんです。
    ヒントを下さってありがとうございます。

  3. 判断をする気力がない、という感じてす。もともと出来なかったとは思いわないんですが。。周りに見下す人がいると、何をやってもマイナスの評価しかされないと感じてしまいます。

  4. 人と比べず 自分のペースでゆっくりと しんどい時は何も考えず 眠れなくともヨコになってください 少しずつあがって来るから

  5. まあ、希死念慮の問題もありますが、

    「どうしたらいいのか分からない」から、皆さん、自殺したいのではないでしょうか。

    1.方法論が分からない。
    2.方法論は分かっても、それを実行するだけのエネルギーや、お金や、技術や、道具がない。

    それで、「どうしたらいいのか分からない」のだと思いますけど。

    従って、精神科の先生は、治療法をきちんと患者さんに提示、説明すればいいのだと思います。

    また、行政は、国民が、精神疾患になった場合のシステムを作り、それを広報すればいいのだと思います。

    特に、精神病の場合、現代医学では、きちんと治らないものが多い。
    つまり、もともと「方法論」が存在していない状態なのです。
    それで、患者さんは、「どうしたらいいのか分からない」になるのだと思います。

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