「部活動での極度に厳しい指導が原因」熊本工業高の生徒の自殺で第三者委 学校風土も指摘

熊本県立熊本工業高校の当時1年生の生徒が自殺した問題で、経緯を調査してきた第三者委員会は、部活動での極度に厳しい指導が原因だった可能性が高いと結論づけました。

第三者委・八ツ塚委員長
「当該の生徒に寄り添った対応をする、組織的な対応に切り替えて、部活動だけに閉じずに、広く情報を得て関係する支援をする形で対応していれば、最悪の結果は防ぐことができたかもしれない。そういう思いを禁じえないところです」

 この問題は、2022年10月、熊本工業高校の1年生の生徒が自殺を図り、その後に死亡したものです。

 第三者委員会は、2年ほどをかけて原因を調べてきました。第三者委員会が21日、熊本県教委に答申した報告書によりますと、生徒は部活動で3年生らから長時間立たされたまま練習態度や礼儀について厳しい口調で指導されることが相次ぎ、そのなかで「殺すぞ」という発言もあったということです。

 これら5件の極度に厳しい指導を「いじめ」と認定しました。

 生徒は亡くなる3カ月ほど前から練習を休みがちになりましたが、急な欠席連絡によって、3年生からさらに厳しく対応されることもあったということです。こうした指導が日常化するなかで、心理的に追い詰められていったと結論づけました。

 また、問題をめぐる学校側の対応について、いじめに相当するという認識を持たず、生徒の心情に配慮した対応をしていなかったと指摘。欠席しがちになった生徒に対して、より厳しく接するよう上級生に指導していた顧問をはじめ、学校の体制に「本質的な問題があった」としました。

 第三者委員会は、熊本工業高校の風土が問題の背景にあるとしました。

 熊本工業高校の多くの部活動では、練習の厳しさ、上下関係の厳格さが特徴で、上級生との理不尽なまでの厳しい関係が特有の伝統として語られることも多いとしています。

 当該の部活動には、次のようなルールがあったと言います。

◆原則として退部は認めない
◆練習場所への通り道は先輩と同じルートを使わない
◆通学路では先輩の自転車を追い越さない など       

 伝統的に行き過ぎた上下関係があった。厳しすぎる部活動内での指導が生徒の死につながってしまったと指摘しています。

 第三者委員会は、伝統と呼ばれるものの内実を見極め、継承すべき内容と部員に無用の苦痛を強いている事項とを峻別することは不可避であり、急務であるとしています。

 白石伸一熊本県教育長は「調査報告書の内容を重く受け止め、学校と連携を図りながら、いじめの未然防止と再発防止に向けて全力で取り組んでまいります」としています。

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