【特集】「拉致監禁に集団傷害事件、バイク窃盗したりとか…」 少年院からの再出発 「学びの現場」【新潟】スーパーJにいがた7月25日OA

罪を犯した少年たちが収容される少年院。厳しい指導を通じ、更生を目指しますが、学校を退学して少年院に入った少年たちには、出院後、どんな社会復帰の道が残されているのでしょうか。少年院の学習環境と、修学をサポートする人たちを取材しました。

長岡市にある新潟少年学院。家庭裁判所から保護処分として送致された16歳から20歳未満の少年に対し、矯正教育や社会復帰支援などを行っています。基本的な収容期間は11ヵ月で、新潟を含む関東甲信越から44人を収容しています。

■少年A(17歳)
「不良グループに入っていて、いつの間にかリーダー的っていうか上の存在になっちゃって。ここに来る前の直前の犯罪だったら、拉致監禁とか、集団で傷害事件を起こしあったりとか、バイク窃盗したりとか。家族が同じ立場だったらどう思うかっていうことをいろんな先生から聞いて、奪ってしまった時間は取り戻せないんですけど、やっぱりほんとに反省しなきゃいけないと思っている。」

鍵のかかった何重もの扉の先で、授業を受けているのは罪を犯した少年たちです。
■先生
「この角度と底辺と高さ、この3つ比べて何か気がつくことありません?」
■少年
「底辺が短くなって高さが高くなります。」
■先生
「どういう時?」
■少年
「角度が大きくなるにつれて。」

この日の授業は数学。高校で習う三角比は、苦戦する人が多い分野だと言います。高校を卒業した人と同等以上の学力があると認められる“高卒認定試験”。希望した11人は、合格を目指し、週3回授業を受けています。

■少年A(17歳)
「看護師になりたいっていう夢があって、そのために専門学校に行かなきゃいけないんですけど、専門学校に入るのもやっぱり高卒の資格が必要で。やっぱり久しぶりに勉強したんで、なかなか知識も覚えられなくて、ほんとに自分との戦いっていうか。」

新潟少年学院では、大学進学など社会復帰の選択肢を広げるため2016年から高卒認定コースを導入。国語・数学・英語の3科目については外部から講師を招いて授業をしています。
■先生
「この角度に対する高さと底辺をサインコサインと表現する。」
■少年
「そもそもなんですけど、角度のマークがよく分からなくて、なんで丸を半等分したやつなんですか?」
■先生
「これは数学の図形を使う時の、決まった定番の記号なの。」

数学を教えるのは、髙橋一雄さんです。新潟少年学院から依頼を受けて、10年以上にわたり指導しています。
■数学指導者 髙橋一雄先生
「ただ知らなかったら知らないだけなんで覚えればいい。学力で彼らのことを人格とかも一切判断しない、わかんなかったら一緒にやっていけばいいんだという感じで。」

学校を中退した少年も多く、学力は人それぞれ。少年たちは、小学生の算数に始まり、たった12回の授業で高校レベルの学力をつけなければなりません。
■数学指導者 髙橋一雄先生
「能力はほんとに高いんですよ。九九とか分数計算ができなかった子が、今現在SIN・COS理解できるんですから。√が入っても。我々がどう働きかけるかによって、子供たちの能力っていくらでも引き出せる。」

20歳のBさんは、学校の勉強についていけないということが一因となり、高校を退学しました。
■少年B(20歳)
「結局もう時間ばっかりできて、好き放題して。でそうすると、やっぱりみんな時間ある仲間同士で集まって、時間ある仲間って結局悪いやつらなんで、そうするとそういう友達ばっかりになってしまって。」

仲間内の傷害事件により、逮捕。少年院に入りました。
■少年B(20歳)
「当時、自分の環境が悪い環境って全然気づけなかったんですよ。その悪いことをしてた時間を今みたいに過ごせてれば、もっと早い段階でいろんなことに挑戦できてたし、今もっと違うところにいれたのかなっていうふうには思いますね。」

法務省の犯罪白書によると少年院を出院後、5年以内に少年が再犯におよび、少年院に再入院、もしくは刑事施設に入所してしまう割合は2割を超えていて、出院後の社会復帰が課題となっています。
■数学指導者 髙橋一雄先生
「やっぱり中卒で(少年院を)出院しても将来が見えないから、彼らは荒れちゃうと思うんですけれども。高卒の資格を取ると、いろんなアプローチができるじゃないですか。選択肢が広がるんで、彼らがすごい夢を持てるんですね。」

少年をサポートするのは、修学支援専門官として勤務して1年の田村龍さんです。去年までは、高校の体育教師でした。
■修学支援専門官 田村龍さん
「(少年院は)教育の原点だと自分は思っていて、今までの教育現場でも学校に馴染めない子だとか、中には問題を起こして学校辞めたりとか、そういった子たちを結構多く見てきて、どうすることもできなかったっていうむずがゆさがずっとあって。」

少年たちとは、要望に合わせて個別面談を実施し、進路選択の相談に乗っています。
■修学支援専門官 田村龍さん
「いいんだよ1回働きながら、学校通うとか。1回働くっていうのを挟むとさ、確かに学びの入り方っていうのは全然違ってくる。」

社会復帰支援を充実させることは、少年たちの更生にも非常に効果的だと感じています。
■修学支援専門官 田村龍さん
「ここに来て、絶望じゃないですけど、この先どうしたらいいんだろうっていうところの中で、この高卒認定試験の資格だったり、例えば大学とか専門学校の夢とか、やっぱり選択の幅っていうところで大きく違ってきますよね。子供たちは未来の話をしてるとき、やっぱり結構目がキラキラしてるというか。」

法務省は4月、少年院に在院中から通信制高校への入学ができる制度も始めました。少年たちの社会復帰に向けて選択肢が広がることが期待されています。
■少年B(20歳)
「自分は高卒認定取れたあとは専門学校に進学したいなっていう風に考えていて、自分が好きな自動車関係に行きたくて。お客さんと自分たちが協力して1番いいものを作れる仕事ができたらいいなっていう風に思ってます。」
■修学支援専門官 田村龍さん
「ここを出てからどうしていくのかっていうのを、なんでしょう、綺麗事だけで終わらせないで、もう本当にリアリティのある、本当に現実味のある進路設計を子供たちと一緒に考えていくっていう風なところを引き続きしていきたいと思います。」

2024年7月25日放送時点の情報です。

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