復旧が進まない…圧倒的にボランティア少なく『なぜ能登半島地震でボランティアの姿を見ないのか』 (2024年4月1日)

被災地の復旧、復興に欠かせないのがボランティアの存在です。

しかし3カ月が経った今もいまだに奥能登では「ボランティアの姿を見ない」という声が上がっています。

なぜボランティアの活動が滞っているのか。その理由を探りました。

輪島市打越町(うちこしまち)。

がれきに挟まった車を重機などで動かそうとしていたのは自治体が派遣した「ボランティア」の人たちです。

作業を依頼した表幸正(おもてゆきまさ)さん(76)。

大地震で自宅前が道ごと崩落し車を動かせない状態となっていました。

「これで最後」と思って買ったお気に入りの車です。

昨年末以来近づくことさえできなかった愛車にエンジンがかかりました。

表さん:
「うわあ…ありがたいなあ。これであとは段差を埋めて車を出すだけやさけ、埋めたら出せるな」
Q作業入られてる様子見てどんな気持ちですか?
「いやあやっぱり…、うれしいですよ。一人ではこんなものはどうしようもないしね。これで上げてくれたら本当にうれしいですよ」

ようやく前に進めるかもしれない。

ここに至るまで3カ月がかかりました。

表さん:
「ボランティアなんてテレビを見ていると出ていたけど、なんかやっぱりこういうところはなかなか来てくれんだろうなと他人事のような。初めて(ボランティアの存在を)知ったような状態やし、テレビを見てたら重機ボランティアが珠洲のほうで車を出すのがテレビに映っとったもんで、市役所に電話して」

近くでボランティアを見かけたり、ボランティアに関する情報に自らたどり着けなかったためこれまで依頼せずにいたそうです。

「ボランティアの姿を見ない」

被災地で多く聞かれる意見です。

登山家 野口健さん:
「いろんな被災地を見てまいりましたけど今回の被災地で明らかに違うのはボランティアが少ない、ボランティアを見ない」

ボランティア:
「珠洲に12人とか聞いてびっくり。100人単位で来てもらわないと全然進まない」

被災地に派遣する県の災害ボランティアは1月27日から本格的に活動が始まりました。

これまでに3万4000人が登録を済ませています。

しかし実際に活動しているのは1日当たりおよそ310人と登録者全体に対して1%程度しか被災地に送り込むことができていません。

防災研究の第一人者で、県の災害危機管理アドバイザーも務めてきた神戸大学の室崎益輝(むろさきよしてる)名誉教授にこの現状について聞きました。

室崎教授:
「県が集めて送り出しているボランティアの数ではニーズに応えきれていない。壊れている住宅の中から大切な物を取り出して、取り出さないと公費解体も進まない。
今のペースでいくと5年も10年もかかっていつまでたっても復興ができない」

室崎教授によると2011年の東日本大震災は3か月でおよそ50万人、2016年の熊本地震はおよそ10万人のボランティアが被災地に入っていました。

一方、これまでに能登半島地震の被災地で活動したボランティアの数はおよそ1万2500人。

同じ最大震度7を観測した過去の大地震と比べると能登の被災地はボランティアが圧倒的に少ない状況です。

県がボランティアを派遣する手順は次の通りです。

まず住民のニーズや必要なボランティアの数をそれぞれの市や町から1週間ごとに聞き取ります。

そのうえで現地に向かわせる人数を調整し派遣しています。

このように被災自治体の前に県が入りボランティア派遣の調整弁となる方式自体、過去にはなかったものだと室崎教授は指摘します。

室崎教授:
「県がボランティアの安全管理というのを考えたと思う。今回のように県が登録制をとるのは僕の知る限りなくはじめて」

馳知事の口から何度も聞かれたこの発言。

馳知事:(1月10日)
「個人的なボランティアの皆さんはお控えいただきたい。ボランティア登録は早め早めにお願いできればと」

厳しい道路状況や宿泊事情を受けボランティアが個人で能登へ入るのは自粛するようにという呼びかけです。

室崎教授:
「直後にSNSでこんな時に被災地に入るボランティアがいてけしからんだとか、(被災地に)行くのは犯罪者だみたいな通知が出た。被災地に入ることに対する批判がすごく多かったので、それをみんな見ているのでボランティアが入るのを躊躇した」

様々な被災地でボランティア活動を行ってきた登山家の野口健(のぐち けん)さんも馳知事の発言が今でも尾を引いていると話します。

野口さん:
「あのときは人命救助が優先だったから、それは分かる。次のフェーズになってボランティアの受け入れが必要になって来たときに、来ないでくれ!の10倍くらいの勢いで言わないと、来ないでくれの方がインパクトが強い。日本中の人助けてくれ!というのをリーダーは繰り返し繰り返し言い続けるべきだと思う」

一方、ボランティアを受け入れる側に問題はないのか。

受け入れの窓口となる奥能登6つの市と町では住民の依頼を受けてから職員が現地調査をしています。

そのうえで県にボランティアの派遣を依頼していて、今のところ 必要なボランティアの数は確保できているといいます。

それでは「ボランティア不足」は起こっていないのでしょうか。

ボランティアに力を借りた表さん。

助けてもらえたはいいけれど複雑な気持ちを抱いていたようです。

表さん:
「これ全部タダでやってもらうってきのどくやわ。申し訳ない。これだけのことをしてもらったらありがたいだけでは済まん気がするけど…」
Qそれなら自分でどうにかできないかなって考えてしまう?
「それは思うね」

多くの県民が普段から口にする「きのどくな」という言葉。

与えてもらうだけではすまない、申し訳ないという慎ましい気持ちが込められています。

「できることなら家の片付けも」
と思っていた表さん。
しかし今後住めるかどうかも分からない家の片付けを依頼するのは申し訳ないと手つかずのままです。

このような気持ちから「助けてほしい」と声を上げられずにいる人は少なくないのではないでしょうか。

室崎教授:
「被災者というのはとても遠慮がちなので、ニーズというのは待つのではなく取りにいかないといけない。全ての家に対してローラー作戦をして何が困っているかを聞いていかないといけない。
(ボランティアの)人数が足りているか足りていないかは被災者の苦しみや悩みが解決されていっているかでみないといけない」

ボランティアにできるのは力仕事だけではありません。

例えばニーズを聞き取るための調査もボランティアに任せてみるのはどうか。

受け身で依頼を待つだけでなく被災地のニーズを進んで拾いにいくこともボランティアの力を借りてできるはずです。

被災した人たちが求めていることは何かボランティアに任せられることは何かを今一度考える必要がありそうです。

38 Comments

  1. 確かに地震のすぐあとに黒いマスクをした怪しい人たちを金沢市内でも見かけ危うさを感じました。
    被災者の方々が圧倒的に高齢化しているので歩みは遅いと思いますが丁寧に対応しているのでこれからだと希望は感じます。

  2. ボランティアはあくまでもボランティアなので強要はできない
    被災者のサポートすらまともに出来てない行政がボランティアのサポートも出来るわけがない
    結局は国はお金を出したくない
    これがみえて仕方ない
    岸田総理、あなたは何をみてますか?
    もっと足元を見るべきです
    自分たちの懐ばかり気にしすぎではないですか?

  3. 生活に余裕があればボランティアもできるけど、自分の生活すらままならないので、力になれず と言ってもお金持ちはボランティアなんかしないよね🤔

  4. ボランティアで片付けにと思い問い合わせしたのですが、人数制限、ルール等で結構ハードル高く断念しました。
    せめて募金と幾度かしていているのですが。。。何だか本当に復興の為になっているのか不安です

  5. ボランティアや民間人の方々は来ないで下さい!と通知はしていたが、結果、県も国も来なかった模様……💧(´Д`)
    何かの悪い冗談ですかね……💧
    駄目な岸田政権💧

  6. 重機ボランティアの方々は尊いです。
    しかし本来は国が税金で速やかに処理すべき案件でしょう。
    地方税が十分であれば自治体案件で良しです。
    財務省がおかしい。

  7. ん?ボランティアに来るなって言ってませんでしたっけ??
    ダチョウ倶楽部の押すなよ?押すなよ?だったんですか?そりゃ分かりにくい。

  8. こんな事を言ってしまうと批判されそうだが、高齢者の多い地方で大震災が起きて、既存のインフラを修理修理で持たせるのは出来ても大半を新規でやり直すのは損益分岐点を超えちゃって無理じゃないかなって思ってた。

    高い費用をかけてインフラ復旧してもそれを受け継ぐ世代が少ないとなるとね。
    あとボランティアってタダ働きさせたいって話でしょ?
    みんな生活あるから震災当初でインパクトが高いうちはともかく半年過ぎたら無理だよ。

  9. 恩送りは、当日に関西からレスキューが来たみたいな報道を聞いて、確かになと思った

    方言で、きのどくな=ありがとう、と思っていた。方言としての『きのどくな』と共通語の『申し訳ない』は報道をしている側でニュアンスを酌んで使い分けてほしいと思いました

  10. 登録の気軽さと現地入りする敷居の高さが全然違う。宿泊地はもとより、現地での最低限のボランティア活動ができる準備が有る事を、様々なメディアを通じてアピールして欲しい。
    また政府・行政はそれをバックアップする政策を前面に打ち出して、ボランティア受け入れを拡充すべき。

  11. 東日本の時より人々の幸福度が下がってるんだよな…不景気だし、コロナもあったし、人のこと心配できるほどの生活してない。

  12. もう、財務省もいきなり「無駄な財政支出は避けたい」と、あからさまに能登復興は無駄という態度だったし、もう永久に見棄てられるんでしょう。

  13. ボランティアじゃなくて、こういう時に国がお金使ってボランティアに少しでもお金払ってはどうかな?
    交通費だったり飲食代だったり宿泊代だったり。
    交通不便で交通費も高く宿泊施設もあまりないからボランティアはいきたくてもいけないのでは?

  14. ボランティアじゃダメ。石川県の失業者全員に手紙を送り、応募者全員を正社員で採用して食事付きぐらいしないと人は集まらないでしょう。

  15. 今日本は絶望的な不景気で、わざわざ無償でボランティアに行く意味は?と、なりますね。みんなお金に余裕が無いとボランティアなんてやってられませんよ。これが都会だったら、とっくに生活出来るようになってます。
    石川県が復旧しなくても、インフラにほぼ影響がないから後回しにされてるんでしょうね。

  16. 自動車保険や火災保険は、こういう時に限って出し惜しみするなよ!詐欺か!消費者庁は機能してるのか!

  17. 知事が復興に消極的な印象を受ける。スマートシティ計画が裏にあるのか邪推してしまう。万博に1000万くらい石川県から出してたけど😅維新の人なんだっけ、ここの政党の知事さんて兵庫といいダメな印象だな。

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