【朗読】「不思議な男」「記憶」深いのにユーモラス。哀しくても希望がある。文学の愉楽と人生の哀切に満ちた名短編!【心理フィクション/宮本輝】

[音楽] 今回は宮本照るの不思議な男と記憶を朗読 します 今夜は久しぶりに酔っ払ったんまあ大抵夜 になると酒を飲む けどこんなにゆったりとよったのは本当に 久しぶり だだからとっておきの話を聞かせる よ気持ちよくよってしかもお前みたいな話 相手がい るっていうのは俺にはここ数年なかった ことだから ね仕事仕事仕事日曜も祭日もあったもん じゃ ないどでかいカビの一室に自分の小さな 事務所をやっと持てたのが5年前だ けどいつ潰れるかわからないデザイン事務 所でラフスケッチから下の切り張りまで 自分1人でやらなきゃいけ ない10時より前に家に帰れた日なんて 数えるほどしかないん だ帰ってくると息子は眠ってる しニボもあびを噛み殺し てるなんか付き合わせるのが気の毒になっ て風呂に入って飯を食ったらついもういい から先に寝ろよって言っちゃうんだな だから酒を飲みだすのは1時頃からに なる音を落としてFM放送を聞きながら この団地の低い天井の下でいろんな妄想に 浸りずつ飲むってわけ だそんな酒が適量で済むはずはないよ [音楽] なまだ小学校の1年生でも隣の部屋で息子 が寝てるって思うだけで随分こっちの精神 状態が違うってことが分かっ た女房が実家に帰って今日で4日目だけど 息子の寝言も女房のおやかないびきも 聞こえない部屋 であと5日間どうやって過ごそうかって 思ってたんだそう思いながら帰ってき たらお前がドアの前に立ってるから びっくりした ね女房のお袋の病気もそんなに心配する ほどのもんじゃないってわかって人安心さ おい今日は飲もうぜとにかく10年ぶりだ いやそうじゃないな12年ぶり だ12年だぜおいお互い不起な人間だ よでも本当によく来てくれたよ景気良さ そうじゃねえか ままあそんなことはどっちでもいい やとっておきの話を始める ぞその前にもういっぱい飲んで喉を閉めろ せて と大学2年の冬のことだよそうすると何年 前になる [音楽] えっと14年も昔だ 覚えてだろあのダンヒルのオイルライター の こと死んだ親父の遺品を整理してたら机の 底から出てきた骨董 品お前欲しがったよ なとにかく 歯磨き粉で磨いたらダヒるって文字と メイドイン イングランドそれに1929って数字が出 てきてどこもガタが来てなかっ たお前わざわざ大体用のオイル買ってきて ちゃんと火がつくかどうか試したん だお前のあの時の顔今でも忘れねえ よついたって言った きり長いこと火を見てたもん なそのうち目向いてさ俺の手からライター をひったくったお前こう言ったんだよおい これは大変なだ ぞいやそうじゃないな大阪弁だ大阪弁大阪 弁でおいこれはどらラタやでて叫んだんだ よ な大学を出てすぐに東京に出てきてそれっ きり大阪へは1度も帰ってねえんだその上 女房も千葉の出身だろ大阪弁なんてもう何 年も使ってないよな だけどこの話をするには大阪弁を使わざる を得ない よこの 話俺は女房にも喋ったことないん だいつか息子が大きくなって俺の酒の相手 でもできるようになったら話して聞かそ うっ て大事にしまっといたん だお前このライターは値段なんてつけられ ねえって言ったよ な1929ってのはこのライターが製造さ れた年のことだろういろんな説はあるけど どうやらダンヒルがライターを作ったのは 1921年だそれもプロトタイプという やつでちゃんとした形のオイルライターが できたのはそれより何年か後だろその オイルライターが日本に正式に輸入たのは 1925年だからおいこれはどえらい ライターやで真鍮性で銀メッキが施して あるけど使い込まれてメキはほとんど剥げ てるでも剥げてるのはまたいいじゃないか その上この形無駄なところが何にもなくて 素朴すぎるくらいだけどこれこそライター だっていう気品があるそれに底の丸い蓋 ネジ式で外すとちゃんと底の裏に補充用の 石をしまうためのサクがしてあるこの ライターが54年も前に作られたなんて 信じられる かお前そうまくし立てたんだ よそれから俺を上目遣いで見 ながら1万円で譲って くれそう言っ た俺が黙ってるとお前はとうと5万円まで 根を釣り上げたん だ 5万円喉から手が出るくらい欲しかった よとにかく親父は借金残して死んじゃうし お袋は体が弱いし大学はまだあと2年も 残ってる しそれどころか明日の米にも困ってた くらいだもん な俺があの時首を縦に振らなかったのは別 にライターの値打ちに引かれたんでもない お前よりもっと金を出そうっていう コレクターに売りつける気もなかっ た俺 は親父がなぜこんなアンティックな ライターを5章大事に持ってたのか不思議 だったんだよ俺の親父は何か物に来るって 男じゃなかった火をつつけるのはマッチで 十分だ何かにつけてそういうところがあっ た からこのライターには誰にも言えない親父 だけの思い出があるんじゃないかそんな気 がしたん だ親父が死んだ直後 で俺も多少干渉的になってたんだと思う よお前がとうとう諦めて帰っちまって ちょうど10日目 だ5万円が欲しくなったん だ借金取りは押し寄せるしおふは寝込ん じゃうし家は抵当に入っててどこかに アパートを借りなきゃいけねえでも俺も おふも金に変えられるものはもう 洗いざらいはえちまってすっからかんに なってたん だお前にライターを買ってもらうしか なくなっ た出かける時電話1本かけりゃよかったん だところが家中の金を5円玉や1円玉まで 書きあめてもその電話台が足りないんだ 俺の住んでた福島区からお前の家がある堺 市までの片道分しか金がなかっ た不思議なもんだよ本当にきっかり片道分 しかなかったんだ俺はそれを思い出すたび に何かいろんなことが分かってきそうな気 がするよだってそうだろうよく考えてみ たら俺が電話をかけてライターを売るって いやお前は俺の家まですきたはずだよ ところが俺には5万円の札しか頭になかっ た電話をかけたら電車賃が10円足りなく なるってことしか考えなかったん だうまくいかない時って なもう何もかもそんな風にことが運ん じゃうんだ よ2月の15日だよ夜の8時過ぎに俺は バスに乗って大阪まで出 たそこから地下鉄で難波まで行って南海 電車に乗り換え た堺駅までの切符を買った時俺は完全に おらになってたポケットに5万円で売れる ライターがあるだけ さライターと引き替えにお前から5万円 受け取っ たらとにかく梅田まで帰ってきて焼き鳥屋 で熱い酒をのって そればっかり考えて電車に揺られてた よお前の家の前に着いたのは9時半頃 だ家の中には伝統が1つもついて ない何回チャイムを鳴らしても応答なし だ俺は1時間近く震えながら門の前で家の 人が帰ってくるのを待ってたあのれの合成 なもんの前 で隣の家の犬がギャンギャンほやがって うんそれで人が玄関から出てきたん だその人に教えてもらわなかったら俺は まだ2時間も3時間もお前の家の前で立っ てたところだ よ昨日からご一家で旅行に行かれましたよ て言われた九州を回ってくるそうだから 相当長い旅行じゃないんですかだっ てお前その時の俺の気持ち分かるか目の前 が暗くなるってもんじゃないぞ俺には一戦 の金もないん だ風が強くて耳がちぎれそうになってた その 上朝牛乳を1本飲んだだけで腹の中は 空っぽなん だ俺はとぼとぼ歩き出したよ駅まで行った 駅長に訳を離してお金を借りようかなんて 考えたから さでも世の中全員の人ばっかりじゃないっ てことが骨身に染みて分かるような事件が 親父の死んだ後次から次へと出てきて さどうしても堺駅の駅長室のドアが押せ なかっ た俺は七屋を探したこれだけの打ちもだ どんな七屋だって金を貸してくれるに違い ないと思いついたんだ電柱に七夜の看板を 見つけてその矢印に沿って歩いていく途中 でふっと気が変わっ たお前が大体に5万円って根をつけたこと に何かすごく腹が立ってきたん だあの当時は大卒の初人休が3万円あるか ないかの時代だ よ俺は200円そこの金がないためにそう な顔つきで七夜に向かってるへ5一家で 吸収旅行か5万円で譲ってくれかちし死ん だって俺は歩いて帰って やら突然そう思ったんだ よ俺はもう一度駅まで戻ってしばらく線路 隊に進ん だそのうち道は行き止まりになった ドジをジザに曲がっ てなんとか国道に出たん やそびえってなあんな夜の寒さを言うんだ ぜそんな嫌な顔すんな よ俺は恨み事言うてるのと違うがな酒から 大阪市福島区まで歩いて帰った真冬の夜の 話をしたいだけ や俺は心の中であることを念じながら歩い とっ たパトカーが取ってくれへんか [音楽] なそのパトカーに乗ってる警官が真中に 1人とぼとぼ歩いてる俺を怪しん で職務質問してくれたらええのに [音楽] なあそしたら俺は一部支を説明 するひょっとしたらパトカーで家まで送っ てくれるかもしれんそう思ったから さところがどんなによたってある子が泥棒 みたいに小走りで周りを伺う格好をしよう がパトカは全然止まってくれへんの や3時間くらい歩いたかないやせいぜい2 時間程度だったかしれ ね時間の感覚も方角の検討もつかなくなっ てたよ寒いなんてのはもう通り越しちゃっ てただひたすら歩いてる新人みたいだった ん だトラックのライトで標識の夜行塗料が 光っ た国道26って次と住吉公園10kmって 字が見えた なんと俺は逆方向に歩いてたん やとにかくわけの分からんうめき声をあげ て引き返し た国道26号線は1本道で難波まで続い てるんだああなんでもええこの道を歩いて いったらええん やそう思っ たらちょっとだけ元気が出てきよった 住吉の向こうは小浜小浜の向こうが岸里 その先が花園町それから大黒長で大国町 から難波までは目と花の先や難波まで たどり着いたら福島までは1時間半か2 時間くらいのもん やろ頭の中で地図を書いて地名を確かめ てるうちに不安になってき た分かる やろこの調子で歩いたら俺は明け方かその ちょっと前ぐらいに花園町を通らなあかん の や花園町や ぞあの鎌崎のある花園町 やこんな寒い日の明け方は必ず道端で何人 かが投資してる花園町のど真ん中を通るん や死でも歩いて帰ったるちゅう決心が ぐらついてきった それでも足だけは前へ動いとったで機械的 に な道にはひっこ1人俺れトラックの音が するたびに道が揺れよっ たそのうちになんとなく誰かが俺の跡を ついてきてるような気がしてちょっと 振り返っ たら10mほど後ろから自転車に乗った男 が俺の歩く速さに合わせて右に左に傾き ながらペダルを漕いとっ た俺はその男をやり過ごすために立ちしべ をしたん やそしたらその男も自転車から降りて立ち しべを しよう俺はそっとソフトボールの大きさの 石を拾ってコートのポケットに入れて 握りしめ たそいつ俺が歩き出したら また自転車に乗ってついてきよるんや俺は どこかの路地に逃げ込むかと思うたけど 相手は自転車やから追いつかれるに決まっ てるわないろんなこと考えたでこいつは 一体何者やろとりやろか強盗やろか強盗 やったらライターを取られるだけで済む けどただ人を殺したいという男やったらど なし俺も辛抱できんようになってな 振り向いて言うたん やなんで俺の跡をつけてくるねん俺は一戦 も持てないぞどっか行ってくれ よ唇がしびれてよだれがつたのもわから んかった ねその男何にも言わんとじっと俺を見とっ たけどそのうち自転車から降りよっ たそれから自転車を押しして俺のそばまで 近づいてきよっ た車のライトが男の顔を照らしよっ た坊主頭で256ちゅうとこか なたら子みたいな唇と普通の人間のバ会員 と違うかと思うような太い眉毛がもう ちょっとのところで俺に悲鳴を上げさせる とこやったれところがや どこまで行くねんってやっと口を開いた その声が女みたいで妙に 優しい俺はそれでもポケットの中の石を 握った まま福島まで帰るんやそう答えた福島って 福島区かああそうやなんで電車に乗れへん ねん一戦もないからや その男自転車の荷台を叩いてのれや送って ある わ備いいよった んそう言われたから言うて簡単に乗れる もんやないで俺は断ったもうついてこん とってくれと頼んでまた歩き始めたん や振り返っても振り返ってもそいつは後ろ におるんやとうとう住吉公園のところまで 来てしも た俺は古ぼけたビルの前で座り込んだふ はぎが伊てその上何べも目前がしたからや 自転車に乗れよ送ったるやん け俺が黙ってると同じ言葉を6回も7回も 繰り返し よる お前俺を自転車の後ろに乗せ てそれでどこへ連れて行くきやねん福島や ん嘘つけそんな手に乗れへんぞさっきから 言うてるやろ俺はもんなしや腹ペコで話も 出へんわいなんぼ俺を引っかけようとし たって無駄 やどこかのタコ部屋に連れ込むつもり やろタコ部屋ってなん や俺はコートの襟を立てて長いこと うずくまった 自分の膝頭のところに顔をうめてなそし たらそんなことしてたら死んでまうぞ送っ たるから乗れやそいつだっこをなめる みたいにのんびりした口でいいよっ た俺は顔をあげ てお前家はないんかって聞い た家はあるでそんならさっさと家に帰れよ しつこいやつやな俺に月を取ったらお前 こそ死んでまう ぞ俺死にたい ねんそいつニコニコ笑いながらそう言い やがっ た あのニコニコに負けた よ不思議なニコニコやった な俺が立ち上がって自転車の荷台に またがったら そいつ 出発って大きな声で嬉しそうに言うて猛然 とペダルを漕ぎ出したんや俺の体に 抱きついとけよそう言われ てそいつの腹に腕を巻きつけて俺は びっくりし たそいつ薄っぺらいジャンパーの下には セーターも下も来てないんやあの夜は霊化 やったで今年最高の冷え込みたて床に乗っ てたよ朝6時の観測では下6度で大阪が 令下5度以下になったのは4年ぶりやて 書いてあっ た俺はそいつのジャンパー越しに伝わって くる体温が気持ちよかっ た競輪の選手みたいなこぎっぷりやった な結体なやつやけどそんなに悪い男でも なさそうやまあなんでもええわほんまに 福島までってくれたら儲けもん やそう思いながら両方のほっぺたを変わる がるそいつの背中に当ててぬくめとっ たそのうちに嫌な予感がしてきたそいつの 言うた一言 や俺死にたい ねん こいつ道連れを探しとったんとちゃうやろ かこの自転車のこぎ方は普通やない こいつほんまに死ぬき や俺は必死でそいつの背中を叩いて スピードを緩めてくれって頼ん だ意外とあっさり言うた通りにしよって 怖いかって聞きよる に俺はケツが痛いんやって答えたそれ からさっき死にたいて言うたやろなんで やそう聞いてみたんや 自転車の横をすれすれに走りすぎていく長 距離トラックの合音よりも風の音の方が きつかった向かい風だな俺は後にも先にも あんな寒い夜は2度とないやろと思う やだいぶ立ってからそいつポツンといい よっ たさっきは死にたかったけど今は行き たい自転車を止めて俺の方に振り向いて こういいよっ た俺1日に5000回ぐらい死にとなっ たり生きとなったりするん や兄貴も病院の医者もそれがお前の病気や ていいよるんやけど俺は何ぼ考えても病気 とは思われへんみんなそうと違うんかお前 はどう や俺は慌てて自転車の荷台から降りたで なんで気がつかんかったんやろかそうか こいつは頭がおかしいんかそう思たら ぞっとしてきて な俺は手長に礼を言うてもうすぐ岸の里や からそこまで行ったら大丈夫やおかげで 助かったどうか帰ってくれって気を悪うさ せんようにやなこのまま何事もなく 別れようとしたん やせやのに俺が歩き出したらまたついて きよ今度は後ろからちごてならんで や俺はなるべく返上せんとこと思うんや けどそいつ一生懸命話しかけてきよるんや その うち妙に俺の気を見出すようなことを言い 出し たお前俺を気違やと思ってる やろなんで やお前かて死にたなったり生きたなったり する やろそんなこと思うの人間だやろ俺が正常 な人間やという証拠やない かそう言われると確かにそんな気がしてき た な返事はせぞと決めてたのにうっかり口を 開いてしも たそらそう やけど1日に5000回もしたなったり なったりするっちゅうの はやっぱりちょっと普通やない でそうかな そいつ黙り込んでなんか考えとっ た大きな交差点の近くまで来てその角に 銀行の看板と時計が見え た3時あった うわ5時間地行も歩いてまだ岸里の手前か そう思った端体中の力が抜けてしもた そいつも時計を眺めてたそれから言いよっ た俺は知ってるん や何 を5000回どころやない5万回50万回 いやもっともっと数えきられへんほど俺は 死んできたん や猛烈に生きとなった瞬間にそれが はっきりわかるん やその 代わり死にたい時は自分の生まれる前の ことはさっぱり思い出されへんねん 何10万回も生まれ変わってきたことが 分からへんようになるん や俺はもういぺ自転車の荷台に乗っ て頼む福島まで送ってくれほはもう歩いて 帰る気力がないん やそやけどもし死にたなったら教えてくれ よ死にたなったちゅうてそしたら俺は荷台 から飛び降りるからな せもこも抜けた声で言うたそいつ声をあげ て笑いよっ たその顔はななんぼ見ても頭のどこかが おかしいてな顔やなかったん やしかし考えてみたら冬の真中に身も知ら ん人間を自転車に乗せて福島まで送って やろうと言うんやから変わってることは 確かに変わってる 多分俺はデカダンスになってたんやろ こんな決なやつの相手をするのもええなち 気分になっとっ たものすごいスピードで走り出し た5分も経たうちにおい浸透なってきた って叫びよった俺は飛び降りた交差点のど 真ん中や俺が飛び降りたらそいつは交差点 を当たり切ったところで自転車をめて じっとうれ てる生きとなるまで俺は歩いてる からそう言うて俺はコートのポケットに 両手を突っ込んで下屋の並んでる歩道を 急い だそいつは自転車にまたがってうれたまま みぎ1つしよらへん相歩いてそいつが闇の 中に隠れた 頃豆粒みた光がだんだん強なりながら 近づいてき たそいつの自転車のライトやっ たおい大丈夫や 乗れよほんまやろ な無理するなよお前のその決定な発作が 収まるまで俺は絶対に自転車に乗れへんぞ うんものすごい嬉しい気分や死んでも死ん でも生まれてくるんやそれさえ知っとっ たらこの世の中何も怖いもんなんてあるか い な 乗れよ花園町の手前まで行く間にそいつ何 べ浸透なってきたって叫びよったと思う 10回や20回なんてもんと違う で俺はその度に自転車から必死で飛び降り たおりそて何べ転んだかわからへん よ風がっていくのと同に温度が下がってき た俺の体は氷 や心の中にはゆたんぽみたいなもんが 生まれとったなそれはその雪釣りの へんてこりんな人間の全員 にほぼとなってたというのんとは違うんや 俺はそいつが生となって目を輝か 死んでも死んでも生まれてくるんやという のを聞いてるうち に自分までが嬉しいなってきたん やそいつがそういう度にそうかそら良かっ た な本気で合槌をうっとっ た空にちょっとだけ青みがかかってき ていよいよ 謎の町のガード下の近くまで来たんや俺は 自転車の荷台に乗って後ろからそいつに 頼んだおいここら辺は厄介な連中が いっぱいうろついてるとこやからここで だけは死にとならんとってくれよそんな こと言われても無理やんところかわずや からおったで直旅を吐いて半分にちぎった タバコを耳に挟んだやつらが 寝てるのか死んでるのかわからんのが体中 に新聞紙を巻きつけて道端で横になっとっ た俺は祈ったよそいつがそこで死にとなら んよう に何人かの男が家の影とか老子から出て きっ た頬のこけた土色の顔をした電柱が やおいもっとスピード 出せよ俺がそう言うた時はもう自転車は 10何人かの男に取り囲まれとったん やその人がきを見つけてあっちこっちから ぎさの人間が人相の悪のが集まってきて なんや仕事かとか おいこいつらどこのやつやとか言い出し たほんまに俺生きた地がせなんだ少なく 見積もっても50人ぐらいの一時も早仕事 にありつきたい人間に囲まれとった で そいつ何人かの人間に愛そを頭下げて おはようござい ますそないよ ねそんなこと言うたら仕事の口を持ってき た人間みたいやない か連中は我先に自転車のハンドルとか サドルとかにしがみつきよ いるのは1人か2人か俺が咲や兄ちゃん こいつらみんな昼まで持てへんからで俺 だけやで時間までバリバリ働けんの はもうあ かん俺らがただの通りすがりの人間やと 分かったらこいつらそのままにしかんやろ 頭に来て俺ら2人を袋叩きにし よるせやけど逃げよにも逃げよがあらへん とにかく前後左右から自転車をつまれてる んやから なアホみたいにおはようございます おはようございますばっかり繰り返しとっ たそいつが突然こない言うたみんなつい とい で前に立ちはかって両手でハンドルを 押さえとった前歯のない男 はみんなって聞き直しよっ たみんなてどんな仕事やねんええから前を 開けてんか みんなついてきたらええねやみんなできる 仕事 や男は道を開けるよう指示しよっ た年寄りでもええんかい な人がきの後ろの方からそんな声が聞こえ た力のいる仕事やないよってに年寄りでも 噛めへん でそいつみんなについてくるよう手招きし てくりと自転車をこぎ始めよっ たガード下をくぐって大黒長への道を のんびりと進み よるその後から70人ほどにも増えた労務 者が口口にどんな仕事やねん見かけ手配や なそんなことを小声で言いながらついて きったんや俺はそいつの耳に顔を近づけて 今や行け そう言うたのにそいつ自転車のスピードを 上げよれへん俺は一瞬考え たこいつは今どっちかの状態の中にある 死にたいのか行きたいのか一体どっち やろそれで俺は背中に何十人もの人間の 視線を感じながら おいお前今は死にたいのか行きたいのか って聞いたんやそしたらそいつどっちでも ないんやなそう答えよ たそんな時もあるんかいや3年ぶりや3年 前まではどっちでも良かったから な俺はそいつの背中を続いて後ろを見る ように言うたお前こいつらをどうする気や ねん早いこと逃げなんだら偉い目に合わさ れる ぞ今逃げたらすぐに捕まる そいつの言うた通りやっ たガードの下をくぐってもだいぶ先まで 手配の車を待ってる連中が遠いの両側で身 を縮めてたっとっ た夜明けのいてつく道を更新してくるう崇 も知らん仲間をポカンと見とっ たそうやほんまにあれは更新やった ガードの上を走っていく1番電車の音が 響い た歩道や道の真ん中をうろうろしてる人間 の数がまばらになって下り坂になった途端 にそいつはスピードを上げたんや俺は そいつが死にとなったんか行きとなったん かそんなことはどっちでも良かった俺も 一緒に死んだる走れ走れ もう絶叫したで横から出てきた自動車が急 ブレーキをかけた道の所々が凍っとった やろ自動車は全て交差点の角のホルモン 焼きに突っ込みよったドム者の何人かが 追いかけできったそのうちの23人が意を 投げよった投げた表紙に全て転びよるのが 見えとった たでソんもむちゃくちゃに自転車を すっ飛ばして逃げたん や大黒町の靴屋の並んでる通りを走りまだ ネオンのとってる難波のダブホテル街の横 を 走り港町を突っ切って四つ橋筋に入る までそいつは何回死にとなってきたって 叫びよったと思う その旅に俺はそいつの体に巻きつけてる腕 に力を込めて心配すんな一緒に死ん だるそう答えとっ た福島区の俺の家の近くに着いたのは勤人 が駅への道を白い息を吐きながら急いでる 自分やっ た俺は自転車から降りて そいつに霊を言う たそいつの薄いジャンパーが汗で びしょ濡れになってたから俺は無理やり それを脱して自分のコートを着せてやっ た俺は花園町を通らんでもええ帰り道を 教えた けどそいつは聞いてるのか聞いてないのか わからんような顔しとったな朝日を浴び てるそいつの顔は なんぼ値引きして思い浮かべてもやっぱり 高々師という言い方 以外他には表現の仕方がなかった よ俺のコートはそいつには小さかったけど 俺が恐縮するくらい丁寧に霊を言っ た俺はもっともっとなんかしてあげたかっ たけどアパこ買う金もあら へんそいつは俺に振って10mほど行って からまた戻ってきよったそれでここう聞き よったんや お前俺を病気やって思う か俺は答えられへんかっ た首を縦にも横にも振られへんかっ たそいつはいつまでも俺の言葉を待っとっ たしょうがないから俺は逆に質問したん や お前ほんまにこれまでに数えきられへん ほど死んできたと思ってるん か俺はそいつの哀れみに満ためを障害忘れ へんと 思うそいつは最初がっかりした顔付きで俺 を見 てお前なんでそれが分かれへんのやって 言うてから俺の頭をそっとなでよったん や俺は3日後に家を明け渡しておふと一緒 に淀川のアパートに引っ越し たこれが俺の誰にも話したことのない とっておきの話 やそんなに不思議そうな顔をする なやしょうもない話を長いこと聞かせ やがってと思ってるやろ早いとこ本題に 入りたいやろわざわざ大阪から東京の俺の 住んでる団長を探し当てて訪ねてきたお前 の本身は初めから分かってたん やあのライターやろ あのダンヒルのオイルライター はコートのポケットに入れたままやっ た1日に5000回も死にとなったり生き となったり する坊主頭なあいつに着せてやったコート のポケットにや [音楽] 少年の漕ぐ自転車がカフを巻き上げて噴水 の向こうに消えていっ た西は雲に遮られて公園を暗くさせベンチ に座っていた人々の腰を上げさせ ば私もそろそろ帰ろうと思っ た夕が質の1つの象徴のように公園を侵食 し始めている気がして心地よいはずの秋の 風も不快な寒気をもたらしてき た腰を上げようとした時隣に座っていた 老人 がお仕事大変です なと言っ た同人はまだ秋だというのに毛糸の手袋を はめていたステッキを持ちズック靴を履い ていた猫背でその上着ている濃い灰色の ジャンパはかなり年代もらしく袖口が ほろびていたから私はああ夕暮れの公園に はいつもこんな貧しそうな老人が何人か 座っていると 思いなるべく目が合わないようわざと背を 向ける格好で座っていたのだった だが突然話しかけられると知らぬふりをし て立ち去ってしまうわけにもいか ずそうですねと答え老人の方を振り返っ たけれども話し相手をさせられるのは迷惑 だったから老人の目を見ずステッキに視線 を落とし たステッキの絵の部分には金の飾り具が 巻かれ造工も施されていてそれがかなりの 縄であるを示してい た私は改めて老人の着ているものに視線を 走らせた使い込んでそれぞれ傷んではいる もののジャンパーも手袋もズボンも皆安も ではなかっ たおさが落ちて脳でも雲に隠れるとどう いうわけかみんな公園から出ていきます春 でも夏でもね不審ですです な老人がそう言った途端また西がさし たカハも電池も路人のずっmuchも赤色 になった私もまた赤色に染まっているので あろう元気がなくなった時はね自分の子供 の時のことを思い出してみるんですよこれ が元気を取り戻すコツです なあ元気がないように見えます か老人は私の問いにただ笑顔で応じただけ で後は何も言わずゆっくりと立ち上がり 小さく頭を下げ一歩一歩彼派の道を 踏みしめるようにして遠ざかっていっ た確かに私はその日1日元気がなかった そうでなば休日でもないのに夕暮れの公園 のベチで時を過ごしたりはし ない私を萎えさせているものはたくさん あった寝不足決まりかけていた団の決裂妻 の流山3歳の長女が隣人の買ったばかりの 新車に国で無数の線を刻んでしまったこと に対する弁償金の 年しかしそれらはたまたま一時に 重なり合っただけで人生にはよくあるな運 に住みずどれも解決のつかない事件では なかっ たそれなのに私はひどく気落ちしてい た人生に破れたことをはっきり自覚した人 みたいにもしくは医とは裏腹にある悪魔的 な力に操られて犯罪を犯してしまった人の よう に深い質に包まれ会社を出ると予定してい た得意先にはが足を運ばず喫茶点で時間を 潰しとぼとぼ路地を歩き回りいつしかこの 公園にやってきたのだっ たほとんど人のいなくなった公園のベンチ に再び腰を下ろしタバコを吸っ たあと20分くらいは気が刺している だろうと考え たもうその姿を噴水の向こうのポプラ道の 奥に消してしまった に私はゾの感情を抱い た彼は元気のない人間を見つけるために 公園のあちこちを散策し悪意に満ちた視線 を配ることを日課にしているのに違いない と思ったのだったそして獲物が見つかると 近づいていきますます生命力を失わせる 方法をそっと耳打ちするの だ子供の頃の自分を思い出し なさい無垢であった時代未来に幸福しか 思い描かなかった時代雨も雷もたがい暑さ や寒さも己れを庇護してくれるものの懐に 潜り込め格好の材料であった 時代そんな時代の自分を思い起こすことは 何 なろうそんな時代に帰れるはずはなく はしいにおしを乗せるだけではない かそう思いながらも私の心の中にはやがて ぼんやりと自分の幼なかった頃のことが 浮かび出てき たけれどもそれはどうしても鮮明な映像に はならなかったどれもこれもモヤの彼の 富裕物のように気味悪く揺れるだけである 子供の頃の思い出と言っても数限りなく しかも私は自分が幼い時どんな顔をしてい たのか思い出さなかったしどんな無双に 浸っていたのかさえ思い起こすことはでき ないので ある私は吸いたくもないのにタバコに火を つれ噴水の水しきに目をやっ た鎖をつけた犬に散歩させられている少年 が止まろうとして足を踏ん張った犬の足が 砂利の上で空回りした犬はぜいぜいと喉を 鳴らしなおも前に進もうとし た少年は結局こん負けして前鏡になり犬に 引きずられてい た 一瞬誰もいなくなった噴水の前に ランドセルを背負ってひょこひょこ歩いて いく小学1年生の私の後ろ姿が見え た見えたというよりあえて私がそこに置い たのかもしれ ない私は7歳の私を赤色の宇宙に忽然と 佇まいて見つめ た入学式のはもちろん母に手を引かれて私 は校門をくっただが翌日も私は母と一緒に 学校へ行っ た帰りはまた母が迎えに来てく た私たち一家は大阪市近の再生丹に住んで いた近所の子供たちは歩いて15分のとに ある小学校に通ってたそれなのに私がバス 通学をしなければならぬ崎小学に学させ られたのは父の移行によってであっ たその陥落外のど真ん中に位置する小学校 は北区では最も程度が高く有数の新学校で ある高校に入れるルートの最初の出発点 だったので あるしかし私は幼い頃からよく迷子になっ て両親を慌てふめかせたことが幾度となく あったの果たして無事に1人でバス通学が できるだろうかというのが父や母の1番の 心配点だっ たバスに乗ってる間は問題はないやろ とにかく終点で降りたらええんや から入学式を数日後に控えた夜 うつらうつらしている私の耳に酔った父の 声がふま越しに聞こえ たとにかくあっちフラフラこっちへ フラフラ行きよるやつや 酒停留場降りてからが問題や な1週間ほどお前が生き返り一緒について やれなんぼあいつでも覚えよる やろそうや なあ1週間も送り迎えしてやったらなんと か迷わんと1人で行き帰りができるように なるやろ けどとにかくそれだけの 仲屋あっち同時がおまっしろまっすぐ行く とこをみへ曲がったりせえへんやろ かやりかねんこでさい なあいつはなんで右へ行くとこ左へ行って しまうよやあれは何かの病気やで何を考え とるんやろあんたがおば日傘で育ってしも たからですならそやからあんな貧乏人の ボンボができたん や貧乏人という言葉が父の勘に触ったよう だった人生どうなっていくか分かるがい今 はこんなとこでくすぶってるけどわしは 女房と子供にひじ思いはさせてないお前の 言う貧乏人とはんやえ貧乏人とはんやねん 父の声が荒だった私は父がまた母を殴ら ないだろうかと不安になった母もしまった と思ったらしくまさかうちの子金持ちの ボンボンとは言えまへんわ なそう小声で取り繕った ああそしたら金持ちとはなんやねんお前 上等の着物を着て大きな家に住んどったら それを金持ちやと言うんか貝塚の嫁はんが 羨ましいんやろもうその話はやめまょうな べ言うたら気がすみます ねん塚とは父の商売仲間でその男の裏切り が父の空を潰す直接の原因となった私は 両親の前世の居が必ずその貝塚という男の 名によって始まることを知っていたので 布団から出ると襖を 開けお父ちゃん お母ちゃんを殴らんといてやと愛願する ように言ったしかし父は私を一別しただけ でさらにごき荒く続けた 貝塚の嫁はが羨ましいんかあの狐みたいな 顔を見て みお白いつけて紅につけておその横に赤 つけてちゅうのはあんな女のこと言うんや そんな言葉子供の前で言わんとって母は顔 をしかめて立ち上がり私を布団に 寝かしつけると囁いたはよねなはれ早ね 早起きの癖をつけとかんと小学校に行く ようになったら困る やろお父ちゃんと喧嘩線とって やうんうんと頷いて母は襖を閉めて隣の 部屋に戻ってき たバスは大阪駅の向かい側で止まりますわ な阪神百貨店のちょうど前やそしたらその ままミ筋の信号を渡って崎警察の横の道を まっすぐすぐ行ったら肛門の前に出るんや さいなんぼあの子でも3日もついて行って やったら覚えます やろ母は怪しくなってきた雲行きを 変えようとして話を元に戻し たそのまっすぐがまっすぐ行きよらんから 困るん や結体なこや わ父が笑っ た私はほっとしてそのまま眠りに落ちたの であっ た母は入学式の人その翌日だけついてきて くれたそして勘で含めるように キョロキョロしている私の頭を叩きこれが 阪神百貨点信号が青になるまで待ってから この道を渡そう言って言葉通りに行動した さ渡ったでこの茶色い建物が警察 や母は私の手を引き歩道を南へ10mほど 行って立ち止まり細い路地を指さし た1つ目のロジ屋でここを曲がるんや左へ 曲がる左やで右と 違う右へ曲がったら車に引かれる でそんなこと分かってるわかても曲がるこ なんやあんた はそして路地に入っていっ た投時だったので私と同じ新入生である ことを示す真新しい帽子とランドセルの 生徒や上級生たちが私たちを追い越してい たこの道をとにかくまっすぐ行くんやでと 母は強い口調で言っ た右側にはや屋やパチンコ屋などへ続く 路地があっ た母は断じてそれらの路地に足を腑に入れ てはいけないと命じたそこに入り込んだら 怖いおじさんがたくさんいて私をどこか 遠くへ連れて行きもう2度と家に帰って くることはできないのだと落とし たある日事業が終わって校門を出てくると 一再びバスに乗って私を迎えに来た母が 心配顔で立ってい た朝と同じ調子で帰り道をえ阪神百貨店の 前まで行きここは降りたとこここでバスを 待ててもあかんのや俺もうちょっと向こう に52番と書いた停留書があるやろあそこ から乗って車掌さんに定期を見せて僕は ここで降りるからたら教えてくださいって 言うんや言えるやろ言うてみな はれ私はランドセルの金具にしっかりと 言いつけられて中にしまい込んである定期 険入れを出し母に言われた通りの言葉を 繰り返し たその翌日私はいよいよ1人で学校へ行く こととなっ た昨日も昨日も同じバスに乗っていた女の 人が停留所にに立っていたバスが橋を渡っ てやってき た私は満員のバスに大人たちの足元を縫っ て運転席の近くに行 た少しも怖くはなかった私はランドセル から定期券入れを出しこれがあればお金が なくても1日に何度もこのバスで行ったり 来たりできるのだと思っ た私は定期券の数字や読めない感じに握っ たり運転手のハンドルさきを覗き込んだり 外の景色を眺めたりした父が丈夫な釣りと 3本で編んだ定期拳入れとランドセルの 金具を結びつけている長い紐を持ち私は 定期拳入れを力いっぱい振り回し たそれは座席に座っていたおじいさんの手 に当たっ た ほら老人はの子を抑えて私を 叱りつけるそんなもん振り回したら危ない やないかと怒鳴っ たびっくりして私は老人に背を向け たバスは梅田新道を左折しみ堂筋を大阪 駅前へと走っ た大きな帽子や なあさっきの老人が笑顔で私の帽子に触っ た もっと小さい のなかったんかい な1番小さい帽子の中に新聞紙を詰めても それはまだ私の眉の下まで落ちてくるので あるこれが1番ちっちゃかったんやそう私 が言うと周りの何人かの大人が笑った私は 恥ずかしさで下を向いたすると帽子がずれ て目も隠れてしまったそれでまた大人たち は笑っ た若い勤め人風の男が私の頭から帽子を 取り手に持っていた新聞酒を追って丸い輪 を作ると汗取りの内側に巻きつけてくれ たすでに父が帽子に同じサクをしてあった ので男の巻いた新聞士は汗取りの内側から かなりはみ出したがおかげで帽子は私の額 で止まって落ちてこなかった私は大声で ありがとう と言っ た顔がちっちゃいんやなまたの傘みたいに なってもうたか な今度はさっきよりもっと多くの人が私を 見て笑い声をあん た私はやせっぽちだと言われるのと顔が 小さいと言われるのが嫌いだっ た1年3組は僕よりもっとちっちゃい子が 3人もいてる で私は当無になっていったのであろう運転 手までが振り返って笑っ たバスから降りると私は春の朝日に満ちた 歩道で立ち止まり定期点入れをランドセル にしまった片手を背に回してそのまま 突っ込めばいいのに私はわざわざランド セルを肩から外して道に置き底の方に しまっ た私は不器用での子供がなくこなせること でもかなり時間を必要としたボタンを かけるのも食事を済ませるのも靴下を白 の私はダンドセルを背負ったがどうも具合 が悪い服の裾が金具に引っかかってめくれ 袖も肘までずり上がっていくら引っ張って も治ら ない私はまたランドセルを下ろし道に置い たそして歩道に座った ランドセルと自分の背を同じ高さにして やっとちゃんと背負うことができ ただがそのために10分近くも時間を 費やしてしまっ た私はみ堂筋に向かって歩きかけ たビルと車と人々の群れが私をたがせ た昨日も昨日も母がそばにいることでそれ らは物珍しく楽しい風景でしかなかったの に1人になると一変して何かしら冷やかな 化け物みたいに見えてきたのだっ た一時私は立ちすくんでい た葉巻きをして地旅を履いた男が私の体を かめて追い越していた男は脇の下に荒みの 弁当箱を挟んでいたが何かにつまづいて よき弁当箱を落としてしまった 歩道に飯の塊と数匹の目指しそれに梅干が 1つ散らばっ た弁当箱の蓋は1本の輪ゴムだけで閉じ られてあったらしく落ちた際輪ゴムが切れ て中身が散乱したので ある男は汚れた飯を拾い目ざしと梅星を 集めて地べたを張ったそして弁当箱に 詰め込み信号をを走り渡ってい た男が渡り散ると同時に信号は赤に変わっ た私は男がひい残した飯粒を見ていたそれ を諦めて立ち去る際の男の悲しそうな顔が 私をさらに心細くさせてい た右側に阪神百貨点の小ウィンドウが見え た の中で何人かの男がマネキに服を着せてい た私は商陰道の前に走って行き男たちの 作業を見物し た信号が青になったので私は二筋を横切り 米崎警察署の前を右に曲がっ た大きな竹籠を背負った赤だらけの同人が 道に落ちたタバコの吸殻を拾い集めていた 長い棒にはペ先が括り付けられていて老人 は右に歩き左によって吸殻を突き刺した私 が老人を避けようとして右によると彼も右 によっ左によると同じように左に寄って くるので ある私はなんとかして老人を追い越そうと し彼が警察署の壁際に寄った瞬間全速力で その横をを駆け抜け た母に教えられた路地はどこまで言っても なかっ た私は木拾いの老人を追い越す時曲がる べき路地の前を通り過ごしてしまったの だっ た私は後ろを振り返ったまま木の老人が 通りすぎるのを待った老人はだんだん私に 近づいてきた私は一応のに持たれ老人から 身を隠すようにした老人は私の足元に落ち ていた吸殻を突き刺し私を見 た瞬きもせず詰め私を指さしたそして突然 大声でいった ほらお前なんで今までわしに手紙の1つも 出さなんだん よ私は胃腸の木の後ろに回り警察署の前 まで逃げたもしその時同じ学校の生徒 らしい自軍が信号を渡ってこなかったら おそらく私はそのまま西も東も分からなく なってどこへ行ってしまったか知れたもの では ない私は上級生らしい小学生たちの後に ついてい た警察署の横の路地を曲がると見覚えの ある父夜の黒いのれが見えた その路地だけ暗く私には1度踏み込んだら 最後2度と後戻りできない道に見え たでも上級性はどんどん進んでいくので私 はよべなくついていっ たその後先に上半身裸の男が倒れてい たうわあ死んでる死ん でる上級生の1人が面白そうに生やし立て た男は酒臭い息を弾ませて起き上がり え今死んでるって言いやがったどいつやと 叫んだ上級生たちは物慣れた身のこなしで 男のそばをすり抜けた私もおじと走っ た毎日ここで死んでるやん けさっきの少年が男に赤んべをしてそう 言った男はふらつく足で追ってこようとし たが尻もちをついてそのまま路上に 横たわっ た死んで まえ別の誰かが言った男は横たわったまま もがいていた上級生の1人がお前も言う たれと私に命じ た死んで前 私が言い終わらないうちに上級生たちは 完成を上げて校門への土地を我先に 駆け出した私は慌てて後ったそして肛門を くぐり1階の端にある自軍の教室に一石 切って入っていっ た今は年おいてしまった母が貧乏生活の まませを終えた父の思い出を語る時そこに は愛情とが 工作王の原因はほとんどが父の叫の悪さと 生活区の中で自分に内緒で女を囲っていた という事実に由しているので あるだ が母の父に対する深い愛情の1つ はいかに1人息子の私を可いがったかいう そのの大きさによってであっ た母は別段隠していたわけではなく忘れて いたのだと前置きして語っ たあの日お父ちゃんが私にそっと言うたん やあいつの後をつけていけっ てバスが着いた時私は家から停留所まで 走って一番後からバスに乗ったので 定期険入れは振り回すしバスから降りたら なんやら急に地べたに座り込んでランド セルを背負い直すし遅刻するかもしれんの に弁当箱とした人をいつまでも見てるし いそ出ていて学校へ連れて行こうかと思っ たけどよっぽどのことがない限りつけてる ことはバレんようにせえて言われてた酒 後ろの方でやきもきしながら隠れてたんや やっと歩き出したと思ったらデパートの商 ウドをひょこひょこ見に行くし信号を無事 にわたと思って人安心したら木のおじい さんを追い越してとんでもない方に走って いくん や目のおじいさんにわけのわからんこと 言われて鉄砲玉みたいに後戻りした時私は もうたまりかねて声をかけたんやでせやの に気がつか へん同時でぐでんぐでんの男に 死んでまちゅうて叫んだ時は お母ちゃん足がガタガタ震えた わ母は話の最後にこう言って微笑みつつ 涙ぐんだのであっ たあんたが校門に入ったのを見届けて家に 帰ってから一部お父ちゃんに話して聞かせ たお父ちゃんはお腹かえて笑いはっ たお父ちゃんがあんなにおかしそうに笑い はったのは商売が潰れてから後にも先にも あの時ぐらいのもんやった やろよかったよかったあの頼りないやでも これで1人で生きていける目がついたその 言う でお前が帰ってくるの今か今と待ってあっ たん や私は噴水を見 た私の姿は消えてい たまたある時浮かび出して歩き出すかも しれ ないけれどもこれはつい1年ほど前母から 聞いた話をもに私があるよ干渉と水のじっ た心で作り上げた想像の産物なので あ私の幼い後ろ姿 は私という人間の中の路地に帰っていった のだろう [音楽] 今回の朗読はいかがでしたかそれではまた 次回お楽しみ [音楽] にH [音楽]

💬日々の現実の背後から、記憶の深みから、生命の糸を紡ぎだす、犀利(さいり)な物語。

🔷短編『📍不思議な男(仮)』を朗読します!🔷
不思議な男との束の間の奇妙な友情―。

🔷短編『📍記憶(仮)』を朗読します!🔷
初めて登校した小学生の記憶―。

📌目次
00:00:00『オープニング』
00:00:29『不思議な男』
00:43:59『記憶』
01:15:16『エンディング』

👦🏻宮本輝(みやもと てる)
日本の小説家。本名は宮本正仁。兵庫県神戸市に生まれる。
後、愛媛県、大阪府、富山県に転居。
関西大倉中学校・高等学校、追手門学院大学文学部卒業。

1947年 兵庫県神戸市生れ。追手門学院大学文学部卒業。
1977年 広告代理店勤務等を経て、「泥の河」で太宰治賞。
1978年「螢川」で芥川賞を受賞。その後、結核のため2年ほどの療養生活を送るが、回復後、旺盛な執筆活動をすすめる。
1987年『道頓堀川』『錦繍』『青が散る』『流転の海』『優駿』で吉川英治文学賞。
2004年『約束の冬』で芸術選奨文部科学大臣賞。
2009年『にぎやかな天地』『骸骨ビルの庭』で司馬遼太郎賞。『水のかたち』『田園発 港行き自転車』等著書多数。
2010年 紫綬褒章受章。
2018年 37年の時を経て「流転の海」シリーズ全九部(毎日芸術賞)を完結。
2019年「流転の海」で毎日芸術賞。
2020年 旭日小綬章。

【関連ワード】
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【関連リスト】
🖊️宮本輝
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🖊️浅田次郎
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🖊️阿刀田高
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🖊️沢木耕太郎
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